歯科治療は外科処置のため、一人一人の治療に高度な集中力と精密な手作業が必要だ。

そのクオリティを保つのために、診れる患者数は1日に5〜15名、私は専門医としてのクオリティを維持するため、治療のアポイントは5名以内を厳守している。

​治療時間自体は、5時間程度だが、それ以外の時間を使い、資料をじっくりと分析し病気に至った原因を突き止め、長持ちする治療計画を立てるなど、「考えること」にかなりの時間を費やしている。

あとは技工作業、咬合器に模型を付着させたり、人工歯の排列やC Tの分析などに費やす時間が3時間ほどだろうか。

診療後には治療の根拠を確認するために論文を検索したり、写真や動画の整理なども行う。

正直私には、週末含めて休日という概念があまりない。かといって苦ではない。

アメリカの留学時代に長時間労働、長時間思考の鍛錬が為されたのだろう。好きでやっているので、苦でもなんでもない。

むしろ自分の予想や計画通りに治療を完了して、患者さんに感謝されるときには、いつも留学して良かった、この仕事について良かったなとつくづくと思うことが多い。

こういうのを「天職」というのだろう。

ただ好きな仕事だが、ここまで高い質を維持し続けるのは、日本の保険診療の範囲内だと残念ながら難しい。

保険診療を悪くいっているわけではない。そもそもの保険点数の設定が安すぎることが問題なのだ。

ギリギリの時間、人員、材料、技術の範囲内で経営を維持させながら、治療の質を担保しようとしている歯科医師がほとんどではなかろか。

このケースを見て欲しい。この方は、前歯を白くしたいと希望されて当院に来院された。

こうした審美的、補綴学的、つまり噛み合わせに十分配慮した治療を行うには、30分という平均的な保険診療の枠のアポイントだとほぼ不可能だ。

日本の保険医療制度は出来高払い、つまり実際に行った治療した処置の点数分にだけ治療費が発生する。コンサルテーションなど専門家に対する知識やアドバイスに対する対価、処置料という者は存在しない。

したがって、時間に追われながら、歯科医は低価格に設定された保険診療報酬をカバーするため、数をこなすしかなくなるのだ。

歯を残すために歯科医院に通っているのに、通えば通うほど歯が悪くなっていく気がしてならない。。本日、インプラントのコンサルテーションのために来院された方がこう漏らしていたのだ。

長時間待合室で待たされた挙句、30分程度の時間で根管治療や虫歯の治療が終わってしまった。入れ歯を入れたのにすぐはずれる、ブリッジ、被せ物をセットして、かみ合わせがおかしいと訴えているのに、制限のある保険診療の範囲内だとこんなものだと、歯科医に取りあえってもらえない。。

このブログを読んでいる方の中にも、今まで待合室の多くの患者で溢れた歯科医院で、こうした対応をされて悲しい思い、辛い思いをされた方もいらっしゃるのではないだろうか。

歯を残すための治療には、その準備にも時間がかかる。

質の高い治療をするには、幅広い知識と豊富な経験に裏打ちされた技術が不可欠だ。

そうした治療を受けるには、それなりの費用も当然発生する。

とりあえず気になるところだけ治して、痛くなったらまた応急処置だけ。それも否定はしない。

所詮歯科治療、人が死ぬことも滅多にない。歯がなくなって噛めなくなることを受け入れることができれば、何の問題もない。そういう方は、少なくても専門医にかかる必要はないだろう。

保険診療の低価格な治療だろうが、無駄な治療は受けたくない。どうせなら質の高い治療を受けたい。ただ専門的な治療だからと言って必要以上に時間もかけたくない。

当院は、そういう方に支持されるクリニックであろう。