歯界展望に今年1月から連載中の留学日記「My Life in New York」。5月号が発売されたようなので、簡単に内容を紹介します。
今回のテーマは、「アメリカ社会のコネ」について。雑誌の記事として取り扱うにはデリケート過ぎる内容だと思ったので書かなかったが、アメリカではコネの他に、「人種」によって立場の強弱がはっきりしている。
差別とまでは言わないが、やはりこの国や社会、少なくても歯科の世界を動かしているのはJ系(もちろんJapaneseではない)の人々で、ファカルティもそちら方面のレジデントに対しては気遣っているを通り越して、どこか恐れているかのような印象さえある。
彼らのネットワークに入り込めば仕事もやりやすいし、反対に評判が悪いと簡単にクビが飛ぶことを知っているからだろう。対応が露骨に違うので、日本だったらエコ贔屓や親の七光り等と反感を買うのかもしれないが、どちらかというとそうした「人種の七光り」は当然あるという前提で物事が動いている。当たり前すぎて、差別に感じない程だ。
ただし利害関係の発生しない間柄だとそんなに堅苦しい関係にはならない。私の同期にも一人いるが、彼はハードワーカーだし素直で本当にいい奴なのでヒトとして信頼できる。ファカルティが理不尽なことを言ってきたら俺に言え、くらい正義感が強く、本当に頼もしいのだが、実際に全部相談したら、マイノリティのファカルティのクビなんか簡単に飛ぶかもしれない。それくらい強力なまさに「Strong background」なのだ。
彼らは留学前の噂通りというべきか、総じて野心家で上昇志向が強く、ビジネスとしての成功者をリスペクトする傾向があるようだ。私に対しては、ケースの写真や完成した技工物をすべて模型にして先を見据えて保存してることや留学日記やブログを通じての情報発信、たまに日本に帰国したと思ったら、セミナーを開催したり、クリニックの買取を進めたり、アソシエイトにクリニックを任せてここに来ているあたりに感心があるのか、一体どうやってマネジメントしているんだ?といつも興味津々で(実際自分自身は全く成功しているとは思っていないが)、いつか一緒にビジネスをしようと熱心に誘われている(そしてブログに何を書いているのか関心があるようで、いつも英語でも書いてくれとプレッシャーをかけてくる)。
他のペリオのレジデントにも何かしようとことある毎に誘われているが、どこまでも貪欲で、野心と才能に溢れるそんな彼らもまだ20代。アメリカの歯科医師、そこからさらに選び抜かれた専門医の中でも間違いなく彼らはトップ層に違いないだろうから、そのまま日本の20代の歯科医と比べるのはナンセンスかもしれない。しかし、日本の若い歯科医の置かれた現状を考えると危機感のようなものを感じざるを得ない。
実際、どのような形で彼らとコラボレーションしていけるのか分からないが、今後は日本の若い歯科医師がこうした同世代のトップ層の専門医と直接繋がることが出来る機会や、刺激し合えるような環境を作っていければと考えている。

ただし、ビジネスとして仕組みを作って、ヒトやモノやお金を右から左に動かしてお金儲けをするようなことはしたくない。もちろん臨床家としての診療が軸になるだろうが、ここで学んだ専門医としての知識や経験、培ってきたネットワークを日本の歯科医療界に最大限還元出来る方法を、これから模索していこうと思っている。