プログラム開始から4週間経過し、
いよいよ患者さんの配当も本格的になってきた。
ここでどういう流れで、residentが患者さんを担当していくのか簡単に説明してみたい。 まずは患者さん側の事情(経済的事情など)や
大学側の事情(夏休み中だとか、
レジデントが卒業してしまうなど)により
ウェイティングリストに掲載してある
患者さんの名簿を30人分くらいはじめに渡され、
各自が電話をしてアポイントを取っていく。
そして、初回はコンサルのみで簡単な診察の後、
補綴科で行える治療や出来ないことを説明し、
治療費の概算を伝える。
初回その時点で診査を希望するなら、
$300を次回支払ってもらい、
それから診査の準備が始まる。
まず型を取り、
フェイスボーを使って咬合器に模型を付着、
X線と口腔内写真の撮影を行い、
それをもとにファカルティと治療計画を相談する。
3回目のアポイントで患者さんに
詳細(治療計画のオプション、費用、期間、治療の流れ等)を説明をする。
患者さんが治療開始を承諾すれば、
治療費の支払い方法を決め、
契約書にサインして治療が開始される
という流れだ。

歯科技工士のローマンと

 
 
 
 
 
 
 
補綴科のスペシャリストを目指すレジデントが
診療を行う我がデパートメントは人気 あるといえばよいのか、一定の評価を得られているようで、
患者来院数はかなり多いように思われる。
その理由はまず、
歯科補綴学専門認定医資格を持つ
Prosthodontistの下、治療計画をしっかり立て、
予め治療内容のオプションや治療費の概算、
治療期間などが決められること。
 
そしてその後その計画通りに、
すでに歯科医師のライセンスを持つ
補綴科レジデントにより、
治療がしっかり行われていくからだろう。
また卒業までにとても診療を終えられない
と判断した難症例を歯学部生が
補綴科に回すケースもかなりあるので、
結果的にComprehensiveな診断と
治療が必要な患者さんだけが集まることになる
というのもあるのかもしれない。 逆にいうと、右下だけインプラント入れたいとか、
虫歯の詰め物が取れたとか被せ物が取れたとか、
さらに入れ歯を修理したいとか、
そういう日本でなら開業医が普通に診療するような
患者さんは一人もいないし、
他で入れたインプラントのクラウンだけとか入れたりはしないようだ。

ランチタイムにレジデント仲間と

 
 
 
 
 
 
 
さらに補綴専門なので(ちなみに我が補綴科は
インプラントのサージェリーを補綴科でやれる、
しかもそれがウリ)、
ペリオや矯正はもちろんエンドも一切診ない。
昨日も一人打診痛を訴えた患者さんがいたが、
打診で痛みを訴えた瞬間、
ファカルティから問答無用で
エンドのコンサルに回すよう指示された。
治療費は基本的に、
生活保護を受けていない人は自費診療になる。
それほど安くはないが、
例えば白い被せ物は歯学部生だと$650、
補綴科レジデントは$1,200、
補綴歯科専門の開業医でマンハッタンだと
$2000以上する。
そう考えると悪い選択ではないのかもしれない。
そのかわりに、
レジデントやファカルティが
授業や仕事で突然休んだりするし、
きちんと治療をするということは
いい方を変えれば指導医がOKを出すまで治療は続く。
つまり毎回の治療時間も治療期間も
非常に長くなるということだが、
これは日本も同じだろう。 こうしたシステムの中、
ここにやってくるNYの患者さんは皆、
治療を担当するレジデント側からすると
色んな意味でChallengingな方や個性が強烈な方が多い。

ペリのレジデントのJennyの歯科治療中

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 昔「ER」でみていたような、
あり得ないと思うような患者さんが来て、
色んなことを言いたい放題訴えて帰っていく。
もちろん親切でジョークの大好きな、
いかにもアメリカ人という
食いしん坊な患者さんもたくさんいらっしゃる。 以上、簡単に補綴科における診療の流れを
紹介してみた。
ここでは日本のように大学の教員
(教授、準教授、助教等)が
患者さんを大学で治療にあたるということはない。
大学はあくまでレジデント達が
臨床研修を行う場であるという位置付けにある。
アメリカでは、大学のファカルティは
大学で教えていると同時に
開業医である場合がほとんどである。
日本のように大学の教員が
大学で自身が患者さんを担当し臨床を行い、
同時に教育を行いつつ、
さらに基礎研究をしているというのことはない。
ここはアメリカの分業による教育システムが
うまく機能している側面と言えるかもしれない。