レジデントとしては最後となるGNYAP本大会も、日曜日に無事終了しました。

演者のレクチャーを聴きながら、少し考えてみました。

日本人歯科医師と欧米の歯科医師との違い。

よく言われるのは、日本人は論文を読まない、エビデンスに基づいた臨床が弱いということ。巷ではそうなっているようですが、超一流の臨床家の「総合力」に、それほど差はないと感じています。

アメリカには本格的な臨床トレーニングのための専門医制度が確立されています。したがって、専門分野の「専門知識」に限った比較だと、アメリカの専門医に分があるのは事実でしょう。

ただ日本の歯科医は専門分野だけでなく、幅広い範囲をカバーしているので、知識や経験の総量という意味ではやはり変わりません。

日本のトップの歯科医師はホームランバッターではない。どちらかというと、アベレージヒッター、トリプルスリー型。

すべての範囲を高水準でカバー出来る、包括的な歯科医療を提供出来るのが強み。

そこに日本人の歯科医師が世界で活躍できる可能性を見いだすことが出来る、とも考えています。

あくまで個人的にな推測に過ぎませんが、日本人の歯科医師が専門医にこだわる必要もないし、自費診療だけにこだわる必要もないのかもしれません。

アメリカに留学したこともない歯科医師が、日本の国民皆保険のことを散々否定しているのをみると、残念に思います。

日本の歯科は事実上、混合診療が認められていますから、それらを組み合わせることで、ある程度のものを提供できます。

毎日3人の患者さんに100%レベルの診療を行えるのが、アメリカだとすると、10人に80%レベルの診療を行えるのが日本。

アメリカは100人が無料相談に来たら、98人は治療費が高過ぎて歯科治療を受けられずに帰られます。その場で、どれだけ痛い、入れ歯が壊れて食べれないと訴えてもです。

実際に、日本の保険制度のことを、ニューヨークの友人達に話すと、誰に聞いても素晴しい制度だと口を揃えていいます。

つまるところ、それをどううまく自身の臨床に取り入れるか。

両方認められているなら、自費診療だけにこだわる必要はない。

ただ何が本当に必要なのか歯科医側が分かっていないと、患者さんの希望を鵜呑みにすることになってしまう可能性が高い。

一方のアメリカ。

アメリカの良い面、アメリカの歯科医療の強みは、確固たる歯科医学教育制度の存在と、世界中から優秀な人材が集まるほどの求心力、国としての魅力があること。

そしてアメリカ人に特徴的なのは、大局観、全体を見通せる力や、物事の本質を見極める能力に秀でていること。

普段は何ごとも手抜きが多いのですが、いざという時の集中力やエネルギーには敵わないなと思うことが多々ありました。

そして「英語」そのものも強み。世界共通語ですから、はやり自然にはいってくる情報量が日本とは比較になりません。

ヒトやシステムの優劣以前に情報量において、日本語しか情報源がない日本の歯科医師とは、それだけで差がついてしまいます。

日本人の方が手先が器用。たしかにそうかもしれませんが、治療スキルそのものはよほど不器用ではない限り、トレーニングで何とかなります。

逆に細かいところに目がいきすぎて全体を見失いがちとも言えます。

一方で患者さんへの対応、ホスピタリティはもちろん日本が優ります。

ただ患者さんを患者様と呼んだり、とにかく患者さんの希望通り、言う通りに治療をしてしまう、歯科医師としての診断、判断よりも、先に患者さんの希望を優先してしまう状況は、医療として考えると、あまり良いとは一概に言えません。

アメリカの歯科医師も個人によって非常にレベルに差がありますが、人種や分化、国土の広さや保険制度など諸々考えると許容範囲か、そこは判断が分かれるところです。

日本の問題点は、とにかく歯科医個人のレベルに差があり過ぎること。。

そして歯学部の置かれた状況が違い過ぎます。

昨今の歯学部は不人気がゆえ、入り口の時点で差が開く。

アメリカでは大学の学部で学業成績のトップ10%に入っていないと、入試の面接にすら呼んでもらえません。しかも大学院としての位置づけなので、学部を卒業してからの歯学部受験となります。

思いつくままに書いてしましたが、これから何をしなければいけないか。

 

私の診療所でやるべきことは一つ。アメリカと日本のいいところだけを考えそれを取り入れていくこと。

歯科医療として必要な診査診断、情報提供、コンサルテーション、治療、予防、メインテナンス等。

すべきことをシンプルに、正確に、長期的な視点で、一貫性を持ってし続ける。

Simple, Accuracy, Predictable, Consistency, Balance

「和洋折衷」、バランスを心がけていこうと思っています。