今週から秋のセメスターが始まった。これから12月中旬までが3年目前期のプログラムとなる。今日で最初の週が終了したが、あっという間に終わってしまった。スケジュールもレクチャーや診療のアポイント、ディレクターとの個別チュートリアル、PG向けの特別セミナーなどで瞬く間に埋まってしまい、そんなにいきなり詰め込まなくても、、という気持ちになったが、今までと違うのは、すべての課題をかなり前向きに捉えられるようになってきたことである。今までの2年間をなんとか乗り越えて全体が見えてきたことで、少しずつ自信のようなものもついてきたのかもしれない。

チュートリアルは、Topic presentationの内容について。私が選んだトピックは、「Provisional restoration in Fixed prosthesis」、すなわち固定性補綴物における仮歯について。Outlineに関してはこれでOKだが、Materialの箇所はもう少し細かく、一つの材料毎の組成や特徴を上げ、それらを一つずつ比較するようアドバイスされた。最後に表を作りまとめ、臨床の手順も一つずつ説明し、比較せよとのことである。予想していたことだが、引用論文の数もどうやら100本は超えそうだ。とにかく指示がやたら細かい。。発表はいつになるか分からないが、とりあえず2週後の金曜日に第3回目のチュートリアルを行うことになった。

授業の方はというと、今週はPractice managementとAmerican Board of Prosthodontics review course(アメリカ補綴科認定医試験対策のためのレクチャー)があった。Practice managementは、ブルックリンで数件の歯科医院を開業しているNYUで補綴科レジデンシーを修了したOBによる講義だった。主な内容は以下の通りである。

専門医として働くための必要書類や保険の種類
クリニックの一専門医として患者に接する際の心構え
どうやって自分の専門性や技術をアピールしていくのか、CVをどう書けばいいのか
代診を雇う時はどこにどう広告を出せばいいのか
患者さんに自医院をどうアピールしていけばいいのか
給与の支払いはどのタイミングでどれくらいもらえるように交渉すべきか

こうした、いかにもレジデントが卒後に直面しそうな課題について、経営者、専門医の立場から実践的で貴重なアドバイスを聴くことができた。
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ABPのレビューコースは、Board(認定医)試験の概略や対策について、どういった資料を集めなくてはいけないのか、どういうことが口頭試問では問われるのか等、これから12月まで10回に渡って行われることになっている。
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そして来週からはこの授業に加えて、Growth&Develpment、Aesthetic & Perio-Pros Lecture Series、Study club、Journal club、Literature Reviewと続々と始まっていく。読む、考える、まとめる、話す、ディスカッションといった具合で、どれも入念な準備が必要で簡単にレクチャーを聴いて終了、と簡単にはいかないものばかりである。

クリニックでの診療の方はというと、総義歯のセット2名、ブリッジのフレームワークの試適、インプラント用アバットメントの印象、部分床義歯と即時義歯のセット、顎顔面補綴が必要な患者の部分床義歯の試適、スプリントの調整等、まさに「補綴科専門医養成課程」にふさわしい補綴のオンパレードといったところだろうか。

もちろん、月曜から金曜日まですべてのセッションにアポイントが入っているのだが、まだセメスターが始まったばかりということもあり、クリニックに来ているファカルティが少ない。ただ昨年までに比べるとレジデントの数も減っているので、ファカルティのサインのもらうのにずっと待たなくてはいけないということがないので、それだけでもましなほうだ。そうは言っても、アポイントのシステムもPCが新しいものに入れ替わり、バージョンアップして慣れるまでこれも時間がかかるかもしれない。どうやら来年一月からすべてのカルテが電子化されるらしく、それに向けて受付やクリニックマネージャーも大忙し。という訳で、マネージャーはじめスタッフ達は普段にも増してバタバタしていた。

ところで、午前中、同期のアービンのチェアをのぞくと、ルシアのジグを作成していた。これから技工室で完成させるらしい。各大学の補綴科レジデンシーによって、また各ファカルティによって違うのだろうが、NYUでは基本的にゴシックアーチトレーサーを使用していない。ルシアのジグもあまり使われないが、どうやら8月から新しく加わったドクター・ガードナーは好んで使用しているようだ。
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ロッカールームでは2年目のパリサが技工士のジョーと前歯部の補綴についてディスカッションしていた。他のレジデントもすっかり日常の生活に戻っている。インターナショナルのレジデント達も各自患者の治療を開始したらしく、ファカルティとあちらこちらでディスカッションしていた。
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私自身は、本日金曜日、午前午後とインプラントの患者さんの印象採得(型採り)を行った。午前中は、下の前歯4本の型採り、午後は、左右奥歯2本のずつの型採りを行った。8月にセットした下前歯のResin bonded bridgeの調子は良さそうである。いや、その下の前歯自体は問題ないものの、上の仮歯の犬歯が若干チッピングを起こしており、どうやら噛み合わせに問題があるようだ。ドクター・カーツと相談し、まずは下顎両側の奥歯のインプラントにクラウンをセットし完成させ、咬合の具合を判断してから、上顎の上部構造の作成にとりかかることになった。

まず左右の噛み合わせの型採りをそれぞれ行い、最後は両側のインプラント上部構造のメタルフレームをセットして、最後にピックアップ印象を行った。そして、上顎フルマウスの仮歯からフェイスボートランスをし、上顎の模型を咬合器にセットし、来週ラボに送ることになっている。

今日は一日中ずっとインプレッションコーピングのスクリューを調節していたので、右手の人差し指が痛くなってしまった。今日は長時間に及ぶ治療で患者さんもさぞお疲れかと思いきや、

「ドクター、今日はずっと治療してたから疲れたでしょう。アイスコーヒー買ってきたからこれでも飲んで。いつもお疲れ様。来週も宜しくね。」

と言って、わざわざ地下のカフェテリアまで行って、差し入れを買って戻ってきてくれた。補綴科は治療が1年、2年に及ぶので、患者さんとの信頼関係も他の科に比較すると深まりやすいのは確かである。こういった感謝の気持ちは本当に嬉しいというか、ますます頑張ろうという、もっと勉強してもっといい治療をしようという気になってくる。当然仕事として治療しているのだから、その責任を果たすのは当たり前のことなのだが、いつもいただくばかりで申し訳ないというか、本当に有難いとしか言いようがない。ただ歯医者になって良かったなとつくづく思う瞬間でもある。医者と患者の間には、人種も宗教も何も必要ない。そこにはただ信頼関係さえあれば、それでよいのだろう。
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