仕事で忙しいラグビー仲間達の要望にお応えし企画した、今回のラグビーW杯紀行。
クリエイティビティーは移動距離に比例すると誰かが言ってましたが、仕事や日常から離れて、日々の生活や人生そのものを客観的に見つめ直す貴重な時間でした。
エディジョーンズ氏曰く、「日本人は世界ではなく日本一を目指してしまう」
以前ラクロス関係の方から大学選手権のシステムを導入する時に同じようなことを聞いた気がします。ラクロスとラグビーだと日本代表の位置付けが違ったりもするので、安易にそうした考えを否定はしません。
大学生活4年間を捧げる、社会人生活の一部を犠牲にし、ラクロスに取り組むのだから、何からの目に見える成果がほしいし、実際ほぼ全てのラクロス関係者の人生は日本代表の活動とは関わりがない。

育成や学生リーグ、国内の社会人リーグや全日本選手権の充実、「最大多数の最大幸福」を目指すことは、現実的な選択肢でしょう。

五郎丸選手が「次はベスト8だと簡単に言えるほど世界は甘くない。練習量が増えたくらいでは勝てない、環境そのものを改善していかないと」とコメントしてましたが、トゥッケナムで一試合観戦しただけでも、その意味するところは肌感覚で理解できました。
グロスターのファンゾーン、パブリックビューイングで観戦したフランス対アイルランド戦、本物のプロフェッショナル同士の戦いに痺れました。次回は警戒し研究を重ね、最初から慎重に戦ってくるこうした伝統国に勝って、ベスト8に勝ち進むのは20年後か、生きているうちに見れるのだろうか。。
ワールドカップで3勝した直後ですら、日本ラグビーのおかれた環境やこれからのことを考えるとそんな悲観的な気持ちになりました。それはイギリスかぶれの皮肉ではなく、実感として。
スーパーラグビー参戦を控え、選手達のプレー環境も変化することが予想されます。所属先の企業のバックアップを引続き受けられるのか、怪我で選手生命が危うくなった場合、どうした保障が受けられるのか。解決しなければ問題は山積みです。
海外のプロ選手達は実際、そうした厳しい環境に身を置き、死にものぐるいで生き抜いていますし、エディー・ジョーンズ氏自身も結果だけで評価されるプロの世界で生きています。
そのような厳しいプロフェッショナルの世界の住人であるエディーさんからすると、日本の選手達は恵まれ過ぎている、生ぬるい、考えが甘い、と映ってしまうのかもしれません。
ただ現実の選手達の生活を考えると、安易に全面プロ化が日本ラグビー界に望ましいカタチなのか、私には分かりません。
こうした現状を、日本代表の選手達はすべて理解していると思いますし、また同じような、いや今回以上のハードな練習に取り組まなければ、W杯での勝利はないと実感しているはず。

これから待ち受ける将来が、イバラの道のりであることを分かった上で、そこを乗り越えていこうとする彼らを今後も応援し続けたいと思います。

今回はラグビー日本代表のこの4年間活動を自分自身の人生に重ね合わせ、最後を見届けようという想いだけロンドンに向かいましたが、それ以上に学ぶこと感じることが多く、実り多き旅となりました。
「日本ラグビーはオリジナルを目指すべき、創造性を発揮すべきだ。オールブラックスの真似をしていても勝てるわけがない。」
歯科の世界にもこれと同じようなことが当てはまる気がしてなりません。アメリカの専門医制度をそのまま導入しても彼らを上回ることはできない。。
日本はじめアジアには、その社会の制度や文化、国民にふさわしい医療があって然るべきだと思いますし、自分の頭で考えて、日本のならではオリジナリティを発揮し、そこを目指さないと世界の中でプレゼンスを発揮することなんて到底不可能でしょう。
「規律」を守って「従順」に練習することも大切ですが、それだけでは勝てない。「自信」と「謙虚さ」、「規律」と「自律」、両方大切ではないでしょうか。
最後に一つ、今回スポーツをしていて良かったこと、気づいたことがあります。それはスポーツを通じて得た海外の国々に対して勝とうとする意思、対抗心、反骨心。それは「彼らには絶対負けない」というマインドセット。
ラグビーだけでなく、ラクロスでもそうですが、アメリカやヨーロッパ、どこの国に行っても、どうしたら彼らに勝てるんだろうという視点で物事をみる、考えるという判断基準が自分の中に存在するということです。
ただやみくもにマネをするのではなく、彼らの良い部分は取り入れつつも、そこからどれだけオリジナリティーを発揮していけるか。
エディー・ジョーンズ氏が優れた指導者であることは疑う余地はありません。ただ彼が築いた土台の上に、日本代表の各選手達が自ら考え、勝つ為の戦術を共有しプレーに落とし込んでいったことも見逃してはならないと思うのです。
さて、日本の歯科の世界がどういう方向に向かっていくのか
ラグビー日本代表の外国出身選手達と同様、外人部隊と揶揄されることもあるのかもしれませんが、私自身も一開業医として、私なりの「Japan way」を探り見つけ、前に進んでいきたいと思っています。